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ケーススタディ

ケーススタディ:メイベリン ニューヨーク — 強気な君たちへ、何も恐れないで

ベトナム市場に長年展開してきたメイベリン ニューヨークは、若者のエネルギッシュで活気あるライフスタイルと強く結びついたブランドとして知られている。しかし近年、Gen Zとの距離を縮め、より深くつながることに課題を抱えていた。では、メイベリン ニューヨークはどのようにして「Mấy Bé Lì, Chẳng Sợ Gì(恐れ知らずな私たち)」キャンペーンを通じ、Gen Zに本当に共感され、インスピレーションを与えるブランドとなったのだろうか。 Context(背景) ブランド・ヘルス・トラッキングレポートによると、メイベリン ニューヨークは2021年に高いブランド想起率(Brand Salience Index)を記録していた。しかし、メイクアップ市場において今後ますます重要となるGen Z層の間では、「距離感がある」「共感性(Relevance)や会話性(Talkability)に欠けるブランド」という認識を持たれていた。 この課題に直面し、メイベリン ニューヨークは、ニューヨーク発ブランドとしてのダイナミックで若々しい「Make It Happen」のスピリットを再強化し、ブランドイメージを再構築する必要があった。 Objectives(目的) コミュニケーション目標 ・Gen Zとのつながりを創出し、インスピレーションを与えるブランドとして、メイベリン ニューヨークのブランドイメージを再構築する。 ビジネス目標 ・SuperStayシリーズの売上を150%増加させる。 Insight(インサイト) 本キャンペーンのターゲットは、15〜25歳のGen Z世代。彼らはメイクに興味を持ち始めているものの、「どうすればいいかわからない」という不安を抱えていることが多い。また、アクティブなライフスタイルを送る彼らには、時間をかけずに、自分らしさを表現できるシンプルで手軽なメイク方法が求められている。 さらにGen Zは、個性が強く、明確なスタンスを持つブランドを好み、環境保護やジェンダー平等といった社会課題にも高い関心を示す傾向がある。また、SNS上でお気に入りのブランドと積極的に交流する意欲も高い。 Strategy(戦略) メイベリン ニューヨークは、以下の3つの要素を軸に戦略を構築した。 Gen Zならではの個性的なパーソナリティ ブランドがこれまでに築いてきたブランドエクイティ SuperStayシリーズの「長時間持続」というUSP ブランドは、ダイナミズム、自信、個性を通じてGen Zにインスピレーションを与えるコスメブランドとして再定義することを目指した。キャンペーンでは、Gen Zに対して以下の3つの価値を明確に訴求した。 ・インスピレーションを与えるブランド(「自分を鼓舞してくれるブランド」)・メイクを導いてくれるブランド(「メイクのやり方を教えてくれるブランド」)・高機能なブランド(「長時間持続する成果を提供するブランド」) Creative Idea:「Mấy Bé Lì, Chẳng Sợ Gì」 「Lì(粘り強い・恐れ知らず)」という言葉は、ブランドスピリット、Gen Zのマインドセット、そして製品のUSPを同時に体現している。キャッチーな言葉遊びを用いた「Mấy Bé Lì」は、恐れず挑戦するGen Zへの“シャウトアウト”であると同時に、ブランドと強く結びつく印象的なフレーズとなった。 …

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「TÌM EM NƠI ĐÂU」― ベトナムにおけるCloseupのケーススタディ

「Tìm em nơi đâu」または「tim em noi dau closeup」というキーワードでGoogle検索を行うと、称賛から批判まで、数え切れないほど多様な評価が表示されます。バイラルの観点から見ると、本キャンペーンはベトナムにおいて成功した事例と言えます。また、オンラインキャンペーンという視点においても、非常に価値の高いショーケースとなっています。 背景(Context) ベトナムの若者の多くは、感情を表現することに対して受動的で内気な傾向があります。15〜25歳の高校生、大学生、若手社会人をターゲットとする歯磨き粉ブランドであるCloseupは、「自信を持って恋を探そう(Confidently seek love)」というメッセージを通じて、若者がより大胆かつ前向きに愛情を表現できるよう後押しすることを目指しました。「Tìm em nơi đâu(君はどこにいるの?)」キャンペーンは、この目標を実現すると同時に、若年層の消費者との結びつきをより強固にするために企画されたものです。 目的(Objectives) ・ターゲット層におけるブランド認知度の向上・若者が自信を持ち、積極的に愛を表現することを促進する 戦略(Strategy) Closeupは、インターネット上で恋を探す一人の大学生の架空のストーリーを軸に、若者たちが自分の気持ちを自信を持って、そして大胆に表現することを後押ししました。このメッセージは、ブランドが掲げるスローガン「Confidently seek love(自信を持って恋を探そう)」と強く一致しています。成功すれば大きなバイラル効果を生み出す可能性を秘めた、巧みで引き込まれるアイデアでした。 しかし、当時のベトナムではバイラルキャンペーン自体がまだ新しく、このストーリーには多くのリスクが伴っていました。詳しく見ていくと、好奇心旺盛なユーザーや競合によって突かれかねない弱点が数多く存在していました。架空の物語を用いる手法は、コミュニティからの反発を招く可能性もあります。さらに、物語をどのように完結させるかという点も大きな課題であり、それ以外にも数えきれないほどの障害が存在していました。 まず評価すべき点は、この大胆かつリスクの高いアイデアを実行することを決断したブランドとエージェンシーの強い覚悟です。多くのブランドが「ユニークなアイデア」を求めながらも、実際にはここまで踏み込むことを避けがちな中、Closeupはその勇気ある挑戦を選びました。そして、その決断は見事に報われる結果となったのです。 クリエイティブアイデア(Creative Idea) 「Tìm em nơi đâu」― キャンペーンの実行 本キャンペーンは、以下の4つのフェーズに分けて展開されました。 フェーズ1:Yahoo 360ブログ、YouTube、フォーラムを通じてストーリーをバイラル拡散し、若者の間で話題を創出。 フェーズ2:集まった世間の注目を活用し、セミナー、イベント、プレス、テレビ、PRを通じて「Confidently seek love(自信を持って恋を探そう)」というメッセージを発信。 フェーズ3:オンラインコンテストを実施し、若者がメッセージと双方向に関わるためのプラットフォームを構築。 フェーズ4:バレンタインデー当日に開催された「バレンタイン・フェスティバル」イベントでキャンペーンを締めくくり。 フェーズ1 ― ソーシャルメディア 物語は、Yahoo 360、YouTube、フォーラムといった主要チャネルを通じてインターネット上に広がり始めました。Yahoo 360が中心的なハブとして機能し、YouTubeやフォーラム、その他のソーシャルメディアがそれを支える役割を担いました。このフェーズは、ストーリーが自然な形で展開され、コミュニティの共感を得た点で非常に成功したと言えます。 ブログには、夢見る若者の心に響く感情豊かでセンチメンタルな投稿が数多く掲載されました。YouTubeでは、時には感動的な楽曲、時には印象的なアニメーション、また時には少し風変わりな表現など、多様なスタイルでクリエイティブな動画が制作され、視聴者に新鮮な体験を提供しました。フォーラムも非常に活発で、キャンペーンの拡散と話題化に大きく貢献しました。 フェーズ2 ― PR 一定期間にわたる集中的なプロモーションの後、このブログはYahoo 360上で非常に高い人気を獲得しました。ハンサムで才能があり、ロマンチックな青年「ナム(Nam)」の名前も広く知られるようになりました。この段階で、ブランドは物語を自然に一段引き上げる形で介入しました。 オフラインでは、「恋愛」や「自信の大切さ」をテーマにしたセミナーなどの活動が実施され、ナムのストーリーは若者にとっての代表的な実例として巧みに組み込まれました。 主要新聞や人気ブログ(OnlyUなど)に掲載されたPR記事によって、ナムは徐々に注目の存在となっていきました。この頃になると、特にマーケターなどの洞察力のある人々は、キャンペーンの意図に気づき始め、物語の真相に関する分析や推測が数多く出回るようになります。同時に、否定的な意見も現れました。しかし、こうした賛否両論こそが、かえってストーリーをより魅力的で引き込まれるものにしました。 フェーズ3 ― ウェブサイト …

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